自由民権Picks

【番外】1928 昭和即位礼の勅語、1915 大正即位礼の勅語


昭和 即位礼ノ勅語

(1928(昭和3)年)

現代語訳:山本泰弘

 我は思う。我が皇室の先祖は神聖で偉大な道に従い、天皇として世を治め、いつの時代も変わることのない国の礎を創始し、永きにわたりただ一つゆらぐことのない天皇の位を受け継いできた結果、ついにそれを我が継ぐこととなった。我は先祖の威厳ある霊に信頼と敬意を抱いて偉大な務めを受け、謹んで神器をいただくとともに即位の礼を行い、みなの衆に告げる。

 皇室の先祖が国を築き民に臨む際は、国を家とみなし、民を子のようにとらえた。歴代の聖帝はその姿勢を受け継ぎ、思いやりを民にあまねく施し、無数の民は進んで帝に敬意と忠誠を捧げ、上と下とが深く心を通い合わせ、君と民とが一体となる。これこそ我が国体の理想であり、天地の間に在るべき人間社会の姿である。

 先々代の明治天皇は、歴史の大局に立って壮大な維新を始め、国内外に明示して将来を見据えた立憲政体を築き、文武両道によって歴史的偉業を成し遂げた。先代の大正天皇はその広大な計画を継承し、業績を拡大して帝の仁徳を天下に知らしめた。我は若輩ではあるが謹んで先代の遺志を継ぎ、祖先の擁護と無数の民の支えに頼ることによって天職を務め、道を踏み外したり誤ったりすることのないことを願う。

 我は、国内については国民道徳の指導を手厚くし、民の心の調和をいっそう追求し、ますます国の勢いが強大になることを念じる。国外については国交を親善にし、永く世界の平和を保ち、あまねく人類の幸福を増すことを願う。みなの衆はいざ、心を一つに力を合わせ、自己を忘れ公に尽くすことによって、我が志に助力し、我に祖先が描いた栄光を実現させ、そして天から見守る祖先の霊に応えさせてくれ。

【原文】

朕惟フニ我カ皇祖皇宗惟神ノ大道ニ遵ヒ天業ヲ経綸シ万世不易ノ丕基ヲ肇メ一系無窮ノ永祚ヲ伝ヘ以テ朕カ躬ニ逮ヘリ朕祖宗ノ威霊ニ頼リ敬ミテ大統ヲ承ケ恭シク神器ヲ奉シ茲ニ即位ノ礼ヲ行ヒ昭ニ爾有衆ニ誥ク

 皇祖皇宗国ヲ建テ民ニ臨ムヤ国ヲ以テ家ト為シ民ヲ視ルコト子ノ如シ列聖相承ケテ仁恕ノ化下ニ洽ク兆民相率ヰテ敬忠ノ俗上ニ奉シ上下感孚シ君民体ヲ一ニス是レ我カ国体ノ精華ニシテ当ニ天地ト並ヒ存スヘキ所ナリ

 皇祖考古今ニ鑑ミテ維新ノ鴻図ヲ闢キ中外ニ徴シテ立憲ノ遠猷ヲ敷キ文ヲ経トシ武ヲ緯トシ以テ曠世ノ大業ヲ建ツ皇考先朝ノ宏謨ヲ紹継シ中興ノ丕績ヲ恢弘シ以テ皇風ヲ宇内ニ宣フ朕寡薄ヲ以テ忝ク遺緒ヲ嗣キ祖宗ノ擁護ト億兆ノ翼戴トニ頼リ以テ天職ヲ治メ墜スコト無ク愆ツコト無カラムコトヲ庶幾フ

 朕内ハ則チ教化ヲ醇厚ニシ愈民心ノ和会ヲ致シ益国運ノ隆昌ヲ進メムコトヲ念ヒ外ハ則チ国交ヲ親善ニシ永ク世界ノ平和ヲ保チ普ク人類ノ福祉ヲ益サム事ヲ冀フ爾有衆其レ心ヲ協ヘ力ヲ戮セ私ヲ忘レ公ニ奉シ以テ朕カ志ヲ弼成シ朕ヲシテ祖宗作述ノ遺烈ヲ揚ケ以テ祖宗神霊ノ降鑒ニ対フルコトヲ得シメヨ

大正 即位礼ノ勅語

(1915(大正4)年)

現代語訳:山本泰弘

 我は祖先の功績を受け継いで、神聖な天皇の位をいただき、ここに即位の礼を行い、あまねくみなの衆に告げる。

 我は思う。皇室の祖先が国を創始して礎を築き、歴代の聖帝が統治を受け継ぎ、豊かさをもたらしてきた。天地とともに永遠に続く神の使命により、いつの世も一筋の帝の位を伝え、神器をまつって日本各地に赴き、天皇の威光を示して民草を安心させた。みなの衆はいつの世も忠実さを受け継いで公に奉仕してきた。主君と臣下の「義」と、父と子のような「情」とによって、他のどんな国にも比類ない国体を作り上げた。

 先代の明治天皇は、維新を実現し、開国の大方針を定め、先祖の遺訓を受け継いで偉大なる帝国憲法を施行し、天皇の支配地を拡大して、空前の偉業を打ち立てた。その神聖なる徳は天下に光り輝き、その思いやりの心は地の隅々にまで満ち満ちる。

我は今、先代の偉大な業績を継ぎ、その生き様に従い、国内は国の礎を強固にして安定を図り、国外は外交を密にして、国内外ともに平和の恩恵を望みたい。

 我が祖先に対して負う責任は極めて重い。祖先の神霊は我の見上げるところにある。我は日夜研鑽し、天職を全うする所存である。我はみなの衆がそれぞれの分に応じた忠誠を示し、各自の生業に精を出して励むことによって、天皇の威光が支えられていることをわかっている。どうか、心を一つにし、力を合わせ、ますます国を光り輝かせてほしい。みなの衆よ、いざ、奮って我が志を体現してくれ。

【原文】

朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ惟神ノ寶祚ヲ踐ミ爰ニ即位ノ禮ヲ行ヒ普ク爾臣民ニ誥ク

朕惟フニ皇祖皇宗國ヲ肇メ基ヲ建テ列聖統ヲ紹キ裕ヲ埀レ天壤無窮ノ神勅ニ依リテ萬世一系ノ帝位ヲ傳ヘ神器ヲ奉シテ八洲ニ臨ミ皇化ヲ宣ヘテ蒼生ヲ撫ス

爾臣民世世相繼キ忠實公ニ奉ス

義ハ則チ君臣ニシテ情ハ猶ホ父子ノコトク以テ萬邦無比ノ國體を成セリ

皇考維新ノ盛運ヲ啓キ開國ノ宏謨ヲ定メ祖訓ヲ紹述シテ不磨ノ大典ヲ布キ皇圖ヲ恢弘シテ曠古ノ偉業ヲ樹ツ

聖徳四表ニ光被シ仁擇□陬に霑洽ス

朕今丕績ヲ續キ遺範ニ遵ヒ内ハ邦基ヲ固クシテ永ク磐石ノ安キヲ圖リ外ハ國交ヲ敦クシテ共ニ和平ノ慶ニ頼ラムトス

朕カ祖宗ニ負フ所極メテ重シ

祖宗ノ神靈照鑑上ニ在リ

朕夙夜競業天職ヲ全クセムコトヲ期ス

朕ハ爾臣民ノ忠誠其ノ分ヲ守リ勵精其ノ業ニ從ヒ以テ皇運ヲ扶翼スルコトヲ知ル

庶幾クハ心ヲ同シクシ力ヲ戮セ倍々國光ヲ顯揚セムコトヲ

爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ